アメリカのエンターテインメント業界で前例のない動きが起きています。世界的な映画企業であるウォルト・ディズニー社とNBCユニバーサル社が、画像生成AIを提供する企業「ミッドジャーニー」を著作権侵害で提訴しました。AIが生み出した“スター・ウォーズ風”の画像が問題となっており、ハリウッド大手が本格的にAI技術に法的対応を取るのは初めてです。
ハリウッド初、AI企業を著作権侵害で提訴
2025年6月11日、ウォルト・ディズニーとNBCユニバーサルの関連会社は、カリフォルニア州中央地区の連邦地方裁判所に「ミッドジャーニー」を相手取り、著作権を侵害されたとして訴訟を提起しました。訴状は110ページにわたり、同社がAIによって生成した画像が、著名なキャラクターや作品に酷似していると指摘しています。
スター・ウォーズやエルサも無断生成対象に
訴状では、AIによって作成された画像が「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーやヨーダ、「アナと雪の女王」のエルサ、「ミニオンズ」や「シュレック」、さらには「スパイダーマン」や「ホーマー・シンプソン」など、数多くの著作権キャラクターに極めて類似していることが明示されています。これらの画像は、ユーザーが簡単な指示を入力するだけで生成可能であったとされています。
ミッドジャーニーのビジネスモデルとは
ミッドジャーニーは画像生成AIサービスを提供しており、ユーザー数は2,100万人を超え、2024年には約3億ドルの収益を記録しました。ユーザーはテキストで画像の指示を与えるだけで、AIが画像を自動的に作成します。訴状ではこの仕組みが「バーチャル自動販売機」のように著作権キャラクターを“無断で配布”していると批判されました。
判例がAI産業に与える影響は
今回の訴訟は、生成AIが著作権に違反しているかどうかを問う重要な裁判になると見られています。AIによって作られた画像が「フェアユース(公正使用)」に当たるのか、それとも著作権侵害となるのか、法的な判断が注目されています。この判例は、今後のAI技術の開発や利用に大きな影響を与える可能性があります。
今後の裁判と業界の対応
これまでにもAIによる音楽や文章生成に関する著作権問題はありましたが、映像・画像分野での大規模訴訟は初めてです。ミッドジャーニー側は訴訟について公式なコメントを控えており、裁判の行方が注目されています。他のAI企業やコンテンツホルダーもこの動向を注視しており、今後は業界全体でのルール整備が求められる局面に入るとみられます。