ソフトバンク孫さんの後継者候補に浮上:宮川潤一氏に迫る

2025年6月27日、ソフトバンクグループの第45回定時株主総会において、創業者・孫正義氏は「後継者候補を頭の中で何人か絞っている」「グループ内にいる」と発言し、次期リーダーへの関心が高まっている。その中で、最も注目を集めているのがソフトバンク株式会社 社長兼CEOである宮川潤一(みやかわ・じゅんいち)氏だ。


宮川氏の人物像とキャリア

宮川氏は大学卒業後、地方でインターネットプロバイダー事業を起業し、通信インフラ整備の第一線で活動してきた実績を持つ。2002年、ソフトバンクグループに合流し、DTHマーケティングやソフトバンクBBを経て、急成長するブロードバンド市場を支えるキーマンとなった。

2006年にはボーダフォン日本法人(後のソフトバンクモバイル)にてCTO(最高技術責任者)として就任。ここで通信ネットワークの品質改善や次世代化をリード。2014年から2015年にはアメリカの大手通信会社Sprint Corporationに出向し、技術COOおよび技術アドバイザーとして米国通信市場の最前線を経験。Sprintは当時、米国第3位の携帯キャリアであり、そこでの知見はソフトバンクのグローバル戦略にも貢献した。

帰国後は2018年にソフトバンク株式会社のCTO、2021年4月からは現職である社長兼CEOに就任。以降、通信事業にとどまらず、AI・IoT・次世代社会インフラ構想の具現化に取り組んでいる。


宮川氏の人柄と経営スタイル

社員や報道陣からは、「明るく快活で、現場をよく知る実行力の人」と評価されている。孫正義氏との関係性も深く、「孫・宮内・宮川」の三氏は“ソフトバンクのだんご三兄弟”と呼ばれ、共に現場主義と挑戦精神を大切にしてきた。

ここでいう「宮内氏」とは、宮内謙(みやうち・けん)氏のこと。1984年にソフトバンクに入社し、2015年から2021年までソフトバンク株式会社の社長兼CEOを務めた。その後は代表取締役会長、特別顧問として経営を支え、現在も取締役としてガバナンス面を支援している。通信事業の立ち上げ期から現在に至るまで、ソフトバンクを技術・営業両面で支えてきた重鎮であり、宮川氏にとっては信頼できる“育ての親”的存在とも言える。

宮川氏は「失敗を恐れず、10の挑戦のうち1つでも成功すれば価値がある」と語り、社員に積極的なトライを促す。また、自らが最前線に立ち、現場の空気を重視する「現場感覚」の持ち主でもある。

社員や報道陣からは、「明るく快活で、現場をよく知る実行力の人」と評価されている。孫正義氏との関係性も深く、「孫・宮内・宮川」の三氏は“ソフトバンクのだんご三兄弟”と呼ばれ、共に現場主義と挑戦精神を大切にしてきた。

宮川氏は「失敗を恐れず、10の挑戦のうち1つでも成功すれば価値がある」と語り、社員に積極的なトライを促す。また、自らが最前線に立ち、現場の空気を重視する「現場感覚」の持ち主でもある。


孫正義氏の信頼と「名指し」報道

株主総会では具体的な名前は出されなかったが、BloombergやStoryboard18など一部メディアは「非公式ながら宮川氏が名指しされた」と報じている。孫氏は「信頼を持って任せられる人物がいる」と語っており、これまでの実績とビジョンの一致度から、宮川氏が後継者筆頭であると見られている。


宮川氏が描くAI社会の未来

2024年のSoftBank Worldでは「AIと共生する社会インフラ」をテーマに、ソフトバンクのAIビジョンを発信。宮川氏の主導のもと、以下のようなAI関連プロジェクトが展開されている:

  • 竹芝本社におけるスマートビル実験:顔認証で制御されるエレベーター、AIによる空調・照明制御など。
  • 自動運転・MaaS連携(MONET Technologies):AIを活用した地域交通最適化に取り組む。
  • 成層圏通信(HAPS Mobile):衛星に代わる低軌道プラットフォームとして世界で注目。
  • AI制御のモバイルネットワーク(AI-RAN):無線制御にAIを導入し、効率化と省エネを実現。
  • 北海道でのAIデータセンター建設計画:国産LLM・大規模AIインフラの構築に貢献。

これらのプロジェクトはすべて、「AIによって社会課題を解決する」ことを目的に設計されており、宮川氏のリーダーシップの下、すでに実証段階に入っている。

さらに、2025年には決算会見の場で、宮川氏は生成AIの活用に対し「死ぬほどポジティブだ」と強調。社内ではChatGPTを中心とした生成AIの徹底活用を推奨しており、「社員には全員使い倒せ」と発破をかけているという。

ソフトバンクグループ全体でも孫正義氏が主導し、生成AI活用コンテストを開催するなど、研究と実装が急加速中である。特に注目すべきは、「和製GPT」の開発構想だ。

グループ傘下のLINEではすでにChatGPTの基盤技術が活用されており、宮川氏は「日本発のGPTを作れるのはわが社しかない」と述べている。現在を「GPT祭り」と称し、新会社を設立し、1000人規模のエンジニアを集結させる構想も明かしている。

このように、AI社会のインフラ構築だけでなく、日本語LLMの主導開発や生成AIを活用した業務変革においても、ソフトバンクは国内外の最前線を走っている。その中心に立つのが、宮川潤一氏である。


その他の後継候補と比較

孫氏は「候補は複数いる」と明言していることから、他にも候補が存在する可能性がある。中でも吉光義光(副社長)氏君和田和子(社外取締役)氏の名前が一部でささやかれている。しかし、技術的知見・経営経験・対外発信力の三拍子がそろう人物は、現時点で宮川氏が唯一無二といえる。

なお、かつて後継者と目されたニケシュ・アローラ氏(元Google幹部)は2016年に退任し、現在は米Palo Alto NetworksのCEOを務めている。


結論:日本のテック業界におけるキーパーソン

後継者問題は、ソフトバンクグループのみならず、日本のテクノロジー業界全体の未来像にも直結する。宮川潤一氏が後継者として明確に浮上したことは、AI・通信・社会インフラの融合という未来への布石ともいえる。

正式な指名は今後に委ねられているが、実質的に後継体制の中核を担う宮川氏の今後の動向から目が離せない。