トランプ政権、AI発展へインフラ優遇策を推進
トランプ米政権は、国内の人工知能(AI)開発を加速させるため、エネルギー供給や土地利用を優遇する一連の大統領令を準備している。
複数の関係者の話としてロイターが2025年6月27日に報じた。
政権は、AIに不可欠なデータセンター建設やAIモデルの学習に必要な電力を迅速に供給できるよう、発電所の送電網接続の円滑化や、連邦政府所有地の提供などを検討している。
AI電力需要とインフラの壁
AIの学習には膨大な電力が必要であり、これが新たな課題となっている。
米国では、AI関連の電力需要が今後10年間で最大数倍に拡大するとの予測もあるが、発電所の建設や送電網接続には、環境影響評価を含む煩雑な手続きが伴い、実現までに数年を要するケースが多い。
トランプ政権は、建設が進んでいる発電プロジェクトを優先的に接続させる仕組みを導入し、開発スピードを加速させたい考えだ。
データセンター向け土地供給と規制緩和策
AI開発に不可欠なデータセンターは広大な土地と資源を必要とするため、適地の確保も大きな障壁だ。
今回の大統領令には、国防総省や内務省が保有する土地を開発業者に提供する方針も盛り込まれる見通し。
さらに、州ごとに必要な水質許可を全国共通の認可制度に一本化し、建設手続きの迅速化も目指す。
AI行動計画と「AIアクションデー」
トランプ大統領は、米国を「AIの世界首都」とする目標を掲げており、今年1月にはAI行動計画の策定を政権に指示していた。
この報告書は2025年7月23日までに提出される予定で、ホワイトハウスは国民の関心を高めるため、この日を「AIアクションデー」とする案も検討中である。
国家エネルギー非常事態と過去の大統領令
大統領は就任初日に「国家エネルギー非常事態」を宣言し、石油・ガス開発や石炭・原子力発電所の新設を支援するため、関連規制の撤廃にも着手した。
これは前政権のAI安全重視の政策(大統領令14110)を転換し、2025年1月23日に発出された新たな大統領令14179に基づくものである。
この動きは、AIと国家安全保障の結びつきが深まる中での重要な転換点といえる。
米中AI競争の加速
AI分野では、中国が論文数や技術開発で米国に迫っており、国家安全保障の観点からもAI分野での優位確保が急務とされている。
中国は近年、AI関連の論文数で世界トップ5%のシェアを占め、米国を追い上げる構図となっている。
環境・産業界との利害関係
この政策には、化石燃料産業への支援が含まれているため、環境保護団体や再生可能エネルギー推進派からの反発も予想される。
一方で、AI関連インフラの急速な成長は、石炭や天然ガスといった従来型電源への需要増加を生む可能性があり、既存エネルギー業界には追い風となっている。