米国で情報源の主流が変化、AIとインフルエンサーが台頭
ニュースサイトのロイターが複数の関係者の話として17日に報じた。ロイター・ジャーナリズム研究所の年次報告「デジタル・ニュース・リポート」によれば、米国ではポッドキャスト司会者や人工知能(AI)チャットボットがニュースの主な供給者として急速に影響力を増しており、伝統的メディアの支配が揺らいでいる。
調査は48カ国で10万人を対象に実施され、特に35歳未満の世代では過半数が主な情報源としてソーシャルメディアや動画配信を利用していることが明らかになった。
ジョー・ローガンらの個人配信者が若者層に強い影響力
今年1月のトランプ大統領就任式後1週間で、ポッドキャスターのジョー・ローガン氏の情報に触れたとする米国人は20%に達し、右派ではタッカー・カールソン氏(14%)、メギン・ケリー氏、キャンデシズ・オーウェンス氏、ベン・シャピロ氏、左派ではブライアン・タイラー・コーエン氏、デービッド・パクマン氏らが目立つ影響力を持っている。
これら配信者は、従来メディアが届きにくかった層に強く浸透しており、「視聴者数の多さだけでなく、結びつきの深さがある」とニック・ニューマン上席調査アソシエートは語る。
AIチャットボットも新たな情報源として存在感
ChatGPT、Google Gemini、Meta AIなどのチャットボットもニュース供給の一翼を担っており、特に25歳未満では15%が週1回以上の利用を報告。全世代でも7%に上っており、若年層を中心に急速に普及が進んでいる。
パーソナライズされた即時回答が魅力とされる一方、情報源の透明性や真偽の検証能力に課題を残す。
偽情報リスクと信頼性のジレンマ
影響力の大きな個人司会者やインフルエンサーは、政治家と並んで「偽情報・誤情報の供給者」として認識されており、米国人の72%が「ネット上の情報が真実か見極める自信がない」と回答した。
これは世界全体でも58%と高水準であり、正確性とスピードの両立が求められる時代における報道の信頼性向上が急務である。
動画・音声志向強まる若年層のメディア利用
全体ではニュース消費において依然としてテキストが主流だが、若者は動画や音声への志向が強く、ニュースポッドキャストやTikTok、YouTubeを通じた情報取得が日常化している。
この傾向はメディア企業にとって大きな転換点となっており、今後はマルチメディア型の情報発信が不可欠になるとみられる。
補足:ジョー・ローガンとインフルエンサー文化の背景
ジョー・ローガン氏は元格闘家・俳優であり、ポッドキャスト「The Joe Rogan Experience」はSpotifyにて独占配信され、1話あたりの視聴者数は数百万にのぼる。
彼の番組は著名ゲストとの長時間対談形式で、政治、健康、AI、文化など幅広いテーマを扱い、信者的なファン層を抱える。
インフルエンサーがニュース提供者として台頭する背景には、従来メディアに対する不信、パーソナライズ性、コンテンツへの共感性の高さがある。
だが同時に、情報の裏付けやファクトチェックの欠如、偏向的表現が混在することも多く、メディアリテラシーの重要性が改めて浮上している。