ニュースサイトのロイターが17日に報じたところによると、米アマゾン・ドット・コムのアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は社内文書で、生成人工知能(AI)とエージェント技術の導入拡大により、同社の従業員数が今後数年間で減少する見通しを明らかにした。業務の効率化と構造改革の一環で、特に定型業務の削減が進む可能性が高いという。
生成AIの導入で業務構造が変革
ジャシーCEOは「生成AIとエージェントの導入が進むことで、仕事のやり方が変わる。一部の業務はより少人数で行えるようになり、別の業務では逆に多くの人材が必要になる」と述べ、従業員構成が再編されることを示唆した。現在アマゾンでは、在庫管理、配送ネットワーク最適化、チャットボットによるカスタマーサービス、商品ページの自動生成といった幅広い分野でAIを活用している。
人員削減の背景と方針
アマゾンは2024年末時点で約150万人のフルタイムおよびパートタイム従業員を抱えていた。過去数年ではAlexa部門やデバイス部門で数千人規模のレイオフを実施してきたが、今後は自然減を中心にホワイトカラーの人員が減少する見通しとなっている。ジャシー氏は、「従来型の業務が少人数で回るようになる」としつつも、「AIと連携できる新しいタイプの仕事も増える」と再配置の可能性も示した。
AIによる労働市場の再編成
世界経済フォーラムの調査によると、企業の41%が今後AIによって一部職種が削減されると予測しており、アマゾンの動きはこのグローバルなトレンドを反映している。一方で、AIエンジニアや運用担当など新たな職種への需要も高まっており、単なる削減ではなく「業務の質的変化」と捉える声もある。アマゾンはこの変化をリードし、今後の業務構造を「人とAIの協業」へと進化させていく構えだ。
補足情報:アンディ・ジャシー氏とAI戦略
アンディ・ジャシー氏は1997年にアマゾンに入社後、2003年にAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を創設し、クラウド事業を収益の柱に育て上げた実績を持つ。2021年に創業者ジェフ・ベゾスの後任としてCEOに就任。2024年からは特に生成AIを社内業務に深く組み込み、生産性向上とコスト削減を同時に実現するAI戦略を強化している。AWSでは日本の三井など大手企業とも連携し、AIによるドキュメントレビューの効率化などを支援している。