中国発ソーシャルメディア企業、小紅書がAI市場に本格参入
中国の人気ソーシャルメディア「小紅書(Xiaohongshu)」は、2025年6月9日、独自開発した大規模言語モデル「dots.llm1」をオープンソースとして公開した。
本モデルは、AI開発者向けの世界的プラットフォーム「Hugging Face」上で配布されており、誰でも利用・カスタマイズ可能となっている。
中国企業が自社開発のAI技術を一般に公開する動きは近年活発化しており、小紅書もこの競争に参入した形だ。モデルの技術仕様やベンチマーク情報は、公開に先立ち6月6日にアップロードされた。
「dots.llm1」の特徴と性能評価
dots.llm1はMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用しており、総パラメータ数1420億のうち、実行時に活性化されるのは140億パラメータのみという高効率設計となっている。
コーディングタスクや一般的な言語理解タスクにおいては、アリババのQwen 2.5シリーズとほぼ同等の性能を持つとされている。
一方で、DeepSeek-V3などの最先端モデルにはまだ及ばないという。
モデルは特に中国語での理解や生成タスクに強く、技術文書によれば「ビッグコードベンチ」「RULER」といった標準的なベンチマークでも優れた結果を示している。
中国国内で進むAIモデルのオープンソース化
近年、中国のAI開発競争は激化しており、アリババのQwenシリーズ、DeepSeekのV3・R1シリーズといった強力なモデルも次々とオープンソースとして公開されている。
特にQwen 2.5は高い多言語対応力と構文処理能力で評価が高く、DeepSeek-V3は英語ベンチマークでGPT-4oに迫る性能を見せている。
このような背景の中、小紅書が独自モデルを公開したことは、単なる技術力の誇示に留まらず、世界のAI開発エコシステムの中で存在感を高める動きと捉えられる。
小紅書とAI開発の背景
小紅書(Xiaohongshu)は2013年に設立され、ファッション・美容・ライフスタイルに関するレビュー投稿で若年層を中心に人気を集めた中国発SNSである。
中国版Instagramとも言われる同社は、2023年からAI分野への投資を拡大し、特にコンテンツ生成や検索機能の強化にAIを活用してきた。
今回のオープンソース化はその流れの中での戦略的な一手とみられる。
同社のAI研究部門は近年急速に拡大しており、自然言語処理(NLP)や画像認識、推薦システムの分野で積極的に論文やモデルを発表している。