マスク氏、DOGE長官としての任務を終了
米実業家イーロン・マスク氏が、トランプ政権下で担っていた「政府効率化省(DOGE)」の特別政府職員としての役割を退任した。退任は2025年5月28日夜から発効される見通しで、ホワイトハウス高官がロイターに語った。
マスク氏は同日、自身のSNS「X」にて「任期の終わりが近づいているが、無駄な支出削減に挑戦できたことに感謝している」とコメントした。
退任の背景:政権内での立場低下と法案批判
関係者によれば、マスク氏は辞任前にトランプ大統領本人とは話し合っておらず、上級スタッフレベルで辞任が決定された。
その背景には、マスク氏がCBSのインタビューでトランプ大統領が推進する税制・歳出法案を「財政赤字を悪化させるもの」と批判したことがある。
この発言はホワイトハウス内で波紋を広げ、特にミラー大統領次席補佐官らが強く反発していた。
DOGEの取り組みとその影響
政府効率化省(DOGE)は、2025年1月に大統領令により設立された組織で、目的は連邦政府の再構築とコスト削減にあった。
マスク氏の指揮のもと、DOGEは連邦政府職員230万人のうち約12%にあたる26万人を削減。各省庁に「DOGEチーム」を設置し、契約の見直しや支出監査を徹底した。
一方で、職員削減による行政機能の低下、サービス遅延といった副作用も発生しており、現場からは混乱の声が上がっている。
マスク氏の衝突と辞任後の動向
マスク氏は、政権内でも特にナバロ上級顧問(貿易担当)との間で摩擦があり、自身が推進する「米欧間ゼロ関税構想」に反対された際にはナバロ氏を「愚か者」と痛烈に批判。
これにより政権内での孤立が進んでいたとみられる。
退任後はテスラ、スペースX、xAIなど民間の事業に専念する見通しで、特にAIおよび宇宙事業での活動拡大が注目されている。
DOGEの制度的課題と国際的波紋
DOGEは議会の承認を経ずに設立された点や、連邦情報公開法(FOIA)に対する抵抗など、透明性の欠如が指摘されている。
また、マスク氏のAI「Grok」が政府機関で使用されていたことにより、データプライバシーと利益相反への懸念も浮上。
さらにDOGEの予算削減により、国際支援活動の打ち切りや縮小が発展途上国での人道危機を悪化させたとの批判もある。
まとめ:マスク氏退任の意味
イーロン・マスク氏の退任は、トランプ政権における効率化政策の転機を示している。
短期間で大規模な政府改革を断行したDOGEは、一定の財政的効果を挙げたとされる一方、その急進性と透明性の欠如が今後の政権運営に影を落とす可能性がある。
今後も、DOGEの取り組みとマスク氏の影響力が国内外にどのような影響を与えるのかが注視される。