ニュースサイトのロイターが25日に報じたところによると、米メタ・プラットフォームズは、AIトレーニングに著作権保護された書籍を無断使用したとして提訴されていた訴訟で、米連邦地裁から勝訴判決を得た。裁判所は原告の主張に証拠不十分と判断し訴えを却下した。一方で、著作権の無断利用が違法とされる可能性があることも判事は明言しており、AIと著作権を巡る議論の行方は引き続き注目される。
メタの行為、違法とは言えず
判決はカリフォルニア州サンフランシスコの連邦地裁で下され、ビンス・チャブリア判事は、メタがAIを訓練するために書籍を利用した行為について、原告側が違法性を立証できていないと判断。原告である著者らの主張は証拠に裏打ちされておらず、著作権法に基づいて違法と見なすには不十分だったとした。
フェアユースとの関係と判事の見解
チャブリア判事は「この判断はメタの行為が合法だと認めたわけではない」と明言。むしろ「多くの状況において、著作権保護された作品の無断使用は違法であり得る」と警告しており、AIの開発と著作権のバランスに慎重な姿勢を見せた。
先日別の訴訟で、AI開発企業Anthropicがフェアユースの法理により著作権侵害を免れたことと対比される。本件との相違は、原告の訴えの構成と証拠の有無にある。
原告側の反応とメタの見解
著者グループの代理人は、「歴史的に前例のない著作物に対する海賊行為があったにも関わらず、裁判所がこれを退けた」として判決に不服を表明。今後の法的対応を検討しているという。
一方、メタの広報担当者は、「フェアユースは革新的なAI技術を実現するうえで不可欠な法的枠組みだ」と述べ、今回の勝訴を歓迎した。
フェアユースの意義と限界
米国著作権法では、フェアユース(公正利用)という概念により、一定の条件下で著作物の無断使用が認められている。判断基準は、使用の目的と性格、使用された作品の性質、使用量とその重要性、使用による市場への影響の4要素で構成される。
近年では、AIモデルの開発において大量の著作物をトレーニングデータとして活用する事例が増加し、著作権侵害との境界が曖昧になっている。2021年の米最高裁判例「Warhol v. Goldsmith」では、たとえ変革的な使用であっても、元の作品の市場を奪うような使用はフェアユースと認められないとされた。
今回のメタに対する訴訟では、原告側の主張が弱かったため棄却されたが、判事自身が「著作権侵害の可能性は否定されない」と示唆しており、AI業界全体にとっても示唆的な判決となった。