クラウド戦略の転換、複数AI企業と提携
米マイクロソフトは2025年5月19日、AI開発企業xAI(イーロン・マスク氏率いる)やメタ・プラットフォームズ、さらに仏ミストラル、独ブラック・フォレスト・ラボと提携し、自社のクラウド基盤「アジュール(Azure)」を通じて各社のAIモデルを提供すると発表した。
これにより、マイクロソフトは従来のOpenAIとの単一提携モデルから脱却し、より中立的かつ開かれたAI提供体制へとシフトする。
今回の提携でAzure上に提供されるモデルは1900以上に達し、企業や開発者はGrok 3(xAI製)やLlama(メタ製)といった多様なAIを選択可能になる。
CEOサティア・ナデラ氏は「これらの新モデルもOpenAI製と同等の信頼性がある」と述べ、「複数のモデルを組み合わせて柔軟に使える時代に入った」と語った。
AIコーディング支援エージェントも同時発表
また、マイクロソフトはソフトウェア開発者の作業を支援する新たな「AIコーディングエージェント」も発表した。
このツールは、ユーザーからの簡単な指示を受けてバグの説明、修正戦略の提案、コードの自動生成を行い、作業完了後には人間によるレビューを求める構造となっている。
GitHub Copilotの進化形ともいえるこの機能は、開発効率を飛躍的に高めると期待されている。
AIエージェントはVisual Studio環境などで統合的に利用でき、コード補完から修正、ドキュメント作成に至るまで幅広くサポートを行う。
補足情報:xAIとGrok 3の背景
xAIは2023年にイーロン・マスク氏によって設立されたAIスタートアップで、Twitter(現X)と連携しながらAIチャットボット「Grok」を開発してきた。
Grok 3はその最新モデルであり、推論力・数学的演算能力・コーディング性能などを向上させ、OpenAIのGPT-4に匹敵するとも評価されている。
xAIは自社開発のColossusスーパーコンピューターを用いてGrokをトレーニングしており、企業向けAIソリューションとして注目されている。
補足情報:Azure AI FoundryとModel Context Protocol
Azure AI Foundryは、マイクロソフトが2024年に発表したAI統合開発プラットフォームで、複数のAIモデルを簡単に切り替え、統合することが可能。
この環境では、xAIやメタなどのサードパーティ製AIだけでなく、OpenAIのモデルも併用でき、ユーザーは業務に最適なモデルを柔軟に選択できる。
また、マイクロソフトは「Model Context Protocol(MCP)」という新たなオープン標準をWindowsやAzureに統合している。
この技術により、AIエージェントはユーザーの文脈や作業環境をより深く理解し、ファイル管理やウィンドウ操作など高度なタスクを自動化できるようになる。
今後の展望
マイクロソフトは今後、より多様なAIモデルを導入し、クラウド上でのAI利用を一層加速させていく見通しだ。
AIの民主化と開放性を掲げる同社の戦略は、競合企業にも影響を与え、業界全体の標準となる可能性がある。