中国H3CがエヌビディアH20チップ不足を警告
中国の大手サーバーメーカーH3Cは、エヌビディアが中国向けに提供しているAI用GPU「H20」の供給に深刻な不安定性があると顧客に通知しました。
通知によると、現在の在庫はほぼ枯渇し、次回出荷は早くても4月中旬になる見込みです。
この遅延の背景には、地政学的リスクや国際物流の混乱が挙げられており、中国のAI開発の足かせになる可能性が懸念されています。
米国の輸出規制とエヌビディアのH20チップとは
米国政府は、安全保障上の懸念から高性能AIチップの中国輸出を制限しています。
その影響で、エヌビディアは主力製品「H100」の中国販売を断念し、性能を抑えたH20チップを設計・供給してきました。
H20は主にAIのトレーニングや推論処理に使用され、性能は劣るものの、輸出規制を回避できる製品として広く採用されています。
利益率重視の供給優先、混乱続くAI市場
H3Cによると、今後のH20供給は「利益優先」の原則に基づき、高収益の長期顧客から順に出荷されるとのことです。
この方針は、AIインフラ投資が活発化している中で、スタートアップや中小企業にとって大きな障壁となりえます。
同社は4月20日以降の納品分も依然として不透明であり、業界全体の不確実性が高まっています。
中国国内チップ開発に注目、ファーウェイとカンブリコンの動向
H20の供給不足により、中国企業は国内製のAIチップへの依存を強めています。
特に華為技術(ファーウェイ)の「Ascend」シリーズや、カンブリコンのチップは、H20の代替として注目されています。
これらは米国の規制の影響を受けないため、安定供給が期待されています。
H20需要拡大の背景には、AIスタートアップDeepSeekの台頭も
中国のAIスタートアップDeepSeekが提供するコスト効率の高いAIモデルが企業に急速に普及しており、それに伴ってH20チップの需要も急増しています。
テンセントやアリババ、バイトダンスといった中国の巨大テック企業もこのモデルを採用し、H20確保に乗り出しています。
この現象は、エヌビディア製品の供給プレッシャーをさらに高める一因となっています。
補足:エヌビディアと中国市場の関係
エヌビディアは2024年、中国市場で約100万個のH20チップを販売し、売上は約120億ドル(約2兆円)に達しました。
同社にとって中国は重要な収益源であり、規制の中でも最大限の利益を確保する戦略をとっています。
しかし、今後の政治的動向や国内メーカーの台頭が、同市場での競争構造を大きく変える可能性があります。