マイクロソフト、全従業員の3%削減を発表
米マイクロソフトは2025年5月13日、全社で約6,000人の従業員を削減することを発表しました。これは全従業員の約3%に相当する規模で、2023年に実施された1万人の削減以来、最大級の人員整理となります。今回のリストラは、同社が急速に進めるAI関連投資と、それに伴う組織の再編を目的としたものです。
解雇対象の4割以上がソフトウェアエンジニア
ワシントン州当局に提出された通知文書によると、今回の削減は特にワシントン州のレドモンド本社周辺に集中しており、同州内で対象となった約2,000人のうち、40%以上がソフトウェアエンジニア職に属していました。これは職種別で最多の削減人数であり、AIによる開発業務の自動化が直接影響を与えているとみられています。
AIによるコード生成がもたらす構造変化
マイクロソフトでは、GitHub CopilotやAzure OpenAIサービスを通じて、AIによるソースコード生成機能を開発環境に取り入れています。サティア・ナデラCEOは2025年4月、同社の一部プロジェクトでは「最大30%のコードがAIによって生成されている」と発言しており、人間の手によるコーディング作業が急速に減少している現実を明らかにしました。
AIはコードの記述だけでなく、エラーの検出や修正提案、テストコードの自動生成までこなすようになっており、これまで複数人で行っていた作業の多くが一人、あるいはAI支援のみで完結できるようになっています。
他部門への影響と管理職層の再編
エンジニア職だけでなく、プロダクトマネジメント職や技術系プロジェクトマネージャーも削減対象となっており、この2職種で約600人が解雇対象となっています。一方で、営業やマーケティングといった顧客対応職種は比較的影響を受けていないとされます。
また、今回のリストラには「管理職層のフラット化」という意図も含まれており、削減対象の約17%が管理職に該当しました。しかし、これは2023年末時点の同社全体における管理職の比率とほぼ同水準であり、フラット化の実効性には疑問の声もあります。
業界全体への波及と労働市場の展望
AIによる業務自動化はマイクロソフトだけの動きではありません。Salesforceは2025年、AI営業支援ツールの導入と共に1,000人超の人員削減を発表し、新たにAI関連の営業職を募集しています。GoogleやAmazonも開発業務やデータ分析の自動化を進めており、既存の職種と新しい職種の「交代」が起き始めています。
米労働省の予測によれば、今後数年でAI・データ関連の職種は急成長する一方、従来型のプログラマーやバックエンドエンジニア職は減少する見込みです。マイクロソフト自身も、今回解雇された従業員に対してAIスキルを含む再教育(リスキリング)プログラムの案内を検討しており、今後の人材戦略の一環と位置付けられています。
AI技術の進化に伴う構造変化は、単なる技術革新にとどまらず、雇用構造そのものを変えつつあります。企業、従業員、そして社会全体が、この大きな変化にどう向き合うかが問われる時代に入ったと言えるでしょう。