OpenAIとマイクロソフトが提携条件を再交渉、IPOを視野に
米OpenAIと米Microsoftが、将来的な新規株式公開(IPO)を視野に入れ、両社間の提携条件を見直していることが報じられた。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道によると、両社はOpenAIの企業構造を柔軟化し、IPOを可能にする方向で協議を進めており、Microsoftはその代わりとして、OpenAIが2030年以降に開発する新たなAI技術へのアクセス権を確保したい考えだという。
130億ドル超の出資関係、焦点は株式保有と技術アクセス
MicrosoftはこれまでにOpenAIに対して130億ドルを超える出資を行っており、現在も同社の営利事業に株式を保有している。
今回の再交渉では、Microsoftが一部の株式を放棄する可能性もあり、その代償としてOpenAIの将来的な技術へのアクセス権を得る方向で検討が進んでいる。
また、両社は2019年に結んだ提携契約の見直しも行っており、同契約では知的財産の使用や収益配分などが定められている。
収益配分の見直しと今後のデータセンター戦略
OpenAIは投資家への説明において、Microsoftへの収益分配を引き下げる計画を明らかにしている。
米ネットメディア「The Information」によると、現状では20%の分配率を、2030年までに10%まで縮小する方向だという。
さらに、OpenAIは2025年1月にソフトバンクグループやOracleと連携し、最大5000億ドルを投じてAI向けデータセンターを新設する計画も発表しており、Microsoftとの提携条件もこのプロジェクトに関連して変更されていた可能性がある。
営利と非営利のはざまで揺れるOpenAIの組織戦略
OpenAIはもともと2015年に非営利団体として設立されたが、2019年には「キャップド・プロフィットモデル(利益上限付き営利)」に移行。
これは、営利活動を通じた資金調達を可能にしながら、一定以上の利益は還元されないという仕組みである。
現在はさらに「パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)」モデルへの転換も検討しており、非営利の使命と資本市場との両立を目指している。
この変革の背景には、イーロン・マスク氏をはじめとする創業者たちの意向や、社会的責任を重視する声もある。
今後の注目ポイントとAI業界への影響
今回の提携条件見直しは、OpenAIの今後の資金調達戦略や、MicrosoftによるAI技術の活用に直接的な影響を及ぼすとみられている。
また、OpenAIのIPOが実現すれば、Google DeepMindやAnthropicなど、他の大手AI企業にも刺激を与える可能性がある。
規制当局や投資家の関心も高く、AI市場の今後の方向性を占う上で、今回の交渉は極めて重要な節目となる。