欧州で、民主主義国家の防衛を目的にAI技術者が新興防衛企業に続々と参加している。
背景には、ロシア・ウクライナ戦争以降の地政学的リスクの高まりや、欧州連合(EU)の支援策がある。
彼らの使命感と技術への挑戦心が、安全保障の最前線に新たな風を吹き込んでいる。
欧州新興企業、防衛分野にAIを積極投入
2025年5月5日、ロイターは、欧州各国でAI技術を核とした防衛スタートアップが活性化していると報じた。
ドローン、自律型監視システム、リアルタイムの情報解析ツールなど、防衛に直結するAI技術の開発が進む中、スタートアップ企業が国家の安全保障における重要なプレーヤーとなっている。
従来は大型防衛企業が担ってきた分野に、新しい企業が参入し、迅速な技術革新を実現している。
AI人材が「防衛」に惹かれる理由
AIエンジニアが防衛分野へ流入する動きは、単なるキャリア選択ではない。
民主主義の防衛、人権保護といった社会的意義が、技術者の使命感を刺激している。
加えて、防衛分野は技術的難易度が高く、リアルタイム処理や極限環境での動作など、技術的挑戦にも満ちている。
これが、優秀なAI人材を引きつける大きな要因となっている。
EUの政策支援が加速装置に
欧州連合は「欧州防衛基金」を通じて、AIを活用する防衛技術への助成を積極的に行っている。
さらに、AI倫理のガイドライン策定、技術の標準化といった制度整備にも取り組み、安全性と透明性の確保に力を注いでいる。
このような支援体制の強化が、新興企業によるAI活用の追い風となっている。
背景:防衛におけるAIの歴史と意義
防衛分野へのAI応用は、米国のDARPA(国防高等研究計画局)による先導で1990年代から始まった。
無人航空機、敵の動向を予測するデータ解析、兵士のサポートを行うAIシステムなど、AIは戦場の風景を一変させてきた。
欧州はその後を追う形で進展を遂げており、特にロシアによるウクライナ侵攻を契機に、自主的な防衛力の確保を重視する姿勢が鮮明になっている。
その中でAIは、人命の保護、迅速な意思決定、資源の効率的活用という点から、極めて重要な戦略的技術となっている。