ソフトバンク、NVIDIAではなくアンペアを買収
ソフトバンクグループは2025年3月20日、米半導体設計企業アンペア・コンピューティングを約65億ドル(約1兆円)で買収することで合意したと発表しました。
近年、AI市場ではNVIDIAが圧倒的な存在感を示していますが、なぜソフトバンクはNVIDIAではなくアンペアを選んだのでしょうか?
その理由について解説します。
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理由1:Armエコシステムとの親和性
ソフトバンクは2016年に英Armを買収し、AIやデータセンター市場への展開を模索してきました。
しかし、2020年にNVIDIAがArmの買収を試みたものの、各国の規制当局の反対により2022年に断念。
その後、Armは独立企業として株式を公開しました。
アンペア・コンピューティングは、Armアーキテクチャを採用したプロセッサを開発しており、特にクラウド向けの高性能かつ低消費電力な設計が特徴です。
ソフトバンクにとって、Armとの関係を維持しながらAI市場で競争力を高めるには、アンペアの買収が最適な選択肢だったと考えられます。
理由2:買収コストと実現可能性
2025年時点で、NVIDIAの時価総額は1兆ドル(約150兆円)を超えており、ソフトバンクがNVIDIAを買収するのは現実的ではありません。
一方、アンペアは成長段階にある企業であり、買収額も65億ドル(約1兆円)と、ソフトバンクにとって手の届く範囲にありました。
また、NVIDIAはAI市場において独占的な地位を築いているため、仮にソフトバンクがNVIDIAを買収しようとした場合、規制当局の厳しい審査を受けることは避けられませんでした。
その点、アンペアの買収はスムーズに進められる可能性が高かったといえます。
理由3:クラウドAI市場の成長とエネルギー効率
現在のAIインフラ市場ではNVIDIAのGPUが中心ですが、AIの計算処理には大量の電力を必要とします。
データセンターの電力消費が問題視される中、クラウドプロバイダーや企業は、よりエネルギー効率の高いプロセッサを求めています。
アンペアのプロセッサは、Armベースのアーキテクチャを採用し、最大192コアを搭載した「AmpereOne®」シリーズを提供しています。
これは、クラウドネイティブなワークロードに最適化されており、消費電力を抑えながら高いパフォーマンスを発揮する設計となっています。
理由4:AI市場での差別化戦略
NVIDIAはすでにAI市場の中心企業であり、GPUを軸に圧倒的なシェアを持っています。
一方で、ソフトバンクはNVIDIAと直接競争するのではなく、新たな市場を開拓するアプローチを取ろうとしていると考えられます。
アンペアの技術を活用することで、ソフトバンクはクラウド向けAIチップ市場に参入し、NVIDIAとは異なる強みを持つインフラを構築できる可能性があります。
これにより、ソフトバンクはAI市場で独自の競争力を確保しながら、新たな成長機会を模索することができます。
まとめ:ソフトバンクの長期的な戦略
ソフトバンクがNVIDIAではなくアンペアを選んだ理由は、Armエコシステムとの親和性、買収コストと実現可能性、クラウドAI市場の成長性、そしてAI市場での差別化戦略にあると考えられます。
アンペアの技術を活用することで、ソフトバンクはクラウド向けAIチップ市場での競争力を高め、AIインフラ事業のさらなる拡大を目指していくでしょう。