AI機能が業績を後押し、Zoomが売上見通しを引き上げ
米ビデオ会議サービス大手のZoom Video Communications(ティッカー:ZM.O)は、2026年度通期の売上高予測を引き上げた。新たな見通しは48億~48億1000万ドルで、従来の47億9000万~48億ドルから上方修正された。
この修正により、市場予想(LSEGまとめ)である47億9000万ドルをも上回る形となった。
Zoomは、ハイブリッド勤務の定着や、AI(人工知能)機能の積極的な統合が業績拡大の主因であるとしている。2025年3月にはAIアシスタント「AI Companion」にエージェント機能を追加し、業務効率化をサポートする新たなサービス提供を開始した。
AI Companionの導入がもたらす進化
ZoomのAI Companionは、推論・記憶・タスク実行・オーケストレーションといった能力を備えており、ユーザーの会議体験や日常業務を高度にサポートする。会議内容の要約やタスクの自動抽出、意思決定支援などを行い、生産性の向上に貢献している。
さらに、企業独自のデータや用語を活用してカスタマイズ可能な「Custom AI Companion」や、ローコード環境でAI機能を拡張できる「Zoom AI Studio」など、エンタープライズ向け機能も拡充された。
これにより、Zoomは競合他社との差別化を強化するとともに、ビジネスユーザーの満足度を高めている。
利益予測も上方修正、AI投資の成果が顕在化
Zoomは調整後1株利益の通期予想も、従来の5.34~5.37ドルから5.56~5.59ドルに引き上げた。これもアナリスト予想(5.41ドル)を上回っている。
2025年第1四半期(2~4月)の売上高は11億7000万ドルで予想通り、調整後1株利益は1.43ドルと、予想の1.31ドルを超える結果となった。
同社CFOのミシェル・チャン氏は「第1四半期も顧客の購買行動に大きな変化は見られず、需要は引き続き堅調だった」とコメントしている。
補足:ZoomとAIの歴史
Zoomはパンデミック下で急成長を遂げた企業だが、コロナ禍後は成長の鈍化が課題となっていた。こうした中、同社はAI技術への投資を強化し、Zoomを単なる会議ツールから“業務支援プラットフォーム”へと進化させてきた。
AI機能を搭載することで、単なる音声・映像の提供から、ナレッジ抽出や意思決定支援といった高度な業務支援までを可能にし、新たな価値をユーザーに届けている。
また、ZoomはAIモデルのトレーニングにユーザーの会話やデータを使用しないことを明言しており、プライバシーとセキュリティの両立を目指している。